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(書評)池上彰が読む「イスラム」世界

夢とお金の専門家、シナジーブレインの安田 修です。

ブログを書くのにもちょっと飽きてきたこともあり、ネタ切れ対策で書評も試してみようかと。仕事でイスラム金融について纏めているその前段階で、『池上彰が読む「イスラム」世界』を読んだのでささっと纏めてみます。世界情勢の概要を掴むには、池上彰さんの本はバカにできませんよ。

まず、簡単にあらすじを纏めた上で感想を書くという形を採ります。5分で読める池上彰、みたいな感じですかね。この辺はまだやったことがないので、探り探りです(笑)。

第1章:イスラム教とは何か?

ユダヤ教とキリスト教、イスラム教は同じ神様を信じていて、キリスト教もイスラム教もベースはユダヤ教にあります。で、イスラム教の主張によれば、モーセとかキリストもムハンマドと同じ「預言者」であり、ムハンマドは「最後の預言者」ということになる。

預言者とは神様からの言葉を預かる人で、予言者(ノストラダムスとか)とは異なります。神様が最初、ユダヤ人に言葉を与え、イエス・キリストに言葉を与えたのに、活かしきれなかったじゃないかと。なので最後に言葉を貰ったイスラム教が良いんじゃないの、とこういう理屈ですね。

信じる神様と聖典が共通しているので、聖地エルサレムが共通だったりもします。ここの奪回を目指した十字軍は、kリスト教徒とイスラム教徒の最初の戦いでした。イスラム教は本来は平和を求める宗教であり、しばしば聖戦と訳される「ジハード」は、「イスラムのために努力する」という意味です。

第2章:現在につながる中東の対立

イスラム教の中には、大きく分けて血統を重んじるシーア派と、慣習や伝統を重んじるスンニ派があり、スンニ派の方が85%と多数派です。これに人種の違いが重なり合って、中東各国は複雑な事情を抱えています。基本的には、考え方が違ったり、民族が違うと仲が悪いわけです。

ユダヤ人は「キリストを殺した民族」であることもあり、キリスト教社会で迫害を受けました。ナチス・ドイツによる大量殺害は有名ですよね。『アンネの日記』の影響もあり、戦後は国際社会でユダヤ人に対する同情が広がります。そして、国連はパレスチナの中に「イスラエル」というユダヤ人のための国家を建設することを認めます。

アラブ世界の中にユダヤ人の国家を作ってしまったので、アラブ諸国の怒りを買い、中東戦争が起こります。この背景には、第1次世界大戦中にイギリスが用いた「3枚舌外交」があります。アラブ人にも、フランスにも、ユダヤ人にもパレスチナを与えると約束したという。『アラビアのロレンス』が有名ですね。

第3章:イスラムと世界の対立

イランでホメイニ師によるイスラム革命が起こり、法学者による統治が行われ、イスラム原理主義が実権を握ります。イラクはスンニ派が少数であるにも関わらず、シーア派であるサダム・フセイン大統領が統治していました。シーア派によるイラン革命は、フセインに脅威を与えます。

そこで、革命が起きたばかりで内戦状態にあるイランに、イラクが攻め込みます。これがイラン・イラク戦争です。アメリカは、この時のイラクを密かに応援します。前国王は親米派であったのですが、この時はイランとの関係が悪化していたからです。そのため、イラクの軍事力は強大になります。

そして、資金的に苦しくなったフセインはクウェートに侵攻します。この時は、欧米諸国は立場を変え、多国籍軍となってイラクを攻撃します。大量の石油が埋蔵されている、サウジアラビアからの要請に従ったものです。イスラム教徒でありながらアメリカ軍駐在を許したことに、オサマ・ビンラディンは激怒します。

第4章:現代イスラムが抱える問題

そして、同時多発テロ、アメリカによるイラク侵攻、と時代は動いていきます。ブッシュ大統領は「大量破壊兵器」「圧政からの解放」を理由にイラクを攻撃したのですが、「大量破壊兵器」は発見されませんでした。石油目当てに、アメリカが他国を強引に攻撃したという構図です。戦後イラクは、大混乱に陥ります。

そして「アラブの春」。一人の青年の焼身自殺をきっかけに民主化要求運動は広がり、チュニジア、エジプト、リビアと広がりました。ただ、独裁政権の崩壊後にイスラム原理主義が台頭するなど民主化がうまくいっている例は少なく、唯一チュニジアが成功例だと言われています。

第5章:イスラム世界とつきあう

本書では、最終章になってようやく、「ハラル」や「イスラム金融」、「シェール革命の影響」などについて書かれています。それらは専門書で勉強すれば良いので、丁度良い構成です。

以上、『池上彰が読む「イスラム」世界』より。イスラム国やISISの話は前書きとあとがきに少し触れているくらいです。2014年7月に出た本なので、仕方ないですね。最新情報はインターネットでフォローするとして、その背景となる基本的な知識を得る、という使い方が良いと思います。

欧米の身勝手さが際立つ

「同時多発テロ」や「イスラム国」などの報道をぼんやりと見ているとイスラム=怖いというイメージを持ってしまっている人もいるかもしれませんが、イスラム世界を中心にちょっと歴史を学べば、身勝手なのはキリスト教世界すなわち欧米の側だと感じるはずです。

石油利権や各国の自分勝手な理屈で中東を分割し、操作し、禍根を残しては無責任に去る、ということを繰り返してきた結果が、今の状態を招いているのではないでしょうか。だからイスラム世界=善でキリスト教世界=悪、というのもあまりにも短絡的な見方ですが、少なくとも両サイドから見ないといけないでしょう。

とかく日本人は宗教に対して苦手意識を持っていることが多いですが、教養として宗教やその歴史を学んでおくことは、グローバル人材として活躍するためにも、必要なことではないでしょうか。池上彰さんの本は、その入り口として、素直にお勧めできます。それでは、また。

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